仙人の遊び心
別に“僕のカリスマ、大竹さん”でも良いのだが、僕的にはカリスマというより仙人に思える。いや、仙人の域に達していると言った方が正確か?
もちろん面識は無い。
御殿場在住時にグリップだとか雑誌だとか、ホントちょっとした物だけを買って、暫しお話をさせてもらったくらい。
『フジアロイってとこで、自転車造ったりしてます。』
『フジアロイ・・・知ってるよ。元ヤマクニって会社だった、アルミフレーム造る工場でしょ。ところで安田会館はちゃんと営業しているの?』
『ええ、なにげに健在です。笑・・・246にバイパスが通って、御殿場から下りてくるのが楽になりましたよ!』
『そうなんだよね。その旧道の交通量が皆無になったから、自転車で走りやすくなったんだよ。』
ある日の、なんでもない会話である。
でも、その回答がなんとも面白い。なんというか、こちらが聞いた事の返事はもちろん、それ以外の細かなネタも返してくる。なんとなく関西人っぽいというか・・・。
出来て間もないfoo fighterに乗ってもらった事もある。
大竹さんが憶えていてくれようがいまいが、そんな事はどうでもいい。
ちょろっとでも転がしてくれた。それだけで良かったのだ。
これ、O-TAKEブランドでリリースされていた“24インチ・MTB”です。モデル名があったかどうかは・・・不明です。憶えてないす。笑
それにしても24のMTBなんて、到底ヒットは望めない隙間中の隙間的なジャンル。『いや、なんとなく造ってみたかったんだよね・・・。』的な事を仰っていたような気がします。
マングース・マヌーバーのオマージュ的な想いで造られたのか?もちろん東洋フレーム製だ。
ある日ぱらぱらと、御殿場の戸田ブックスでサイスポを立読みしていて“MTBショップ・オオタケ”の広告を観ていると・・・。
24MTB/フレーム・フォークセット=¥○○ぽっきり!が目に飛び込んで来た。でも、もちろんその時点では購入に至らない。
ゆっこって女の子から、ちょうどその時期に相談を受けた。2001か2002年の秋頃だったと思う。
『自転車欲しいんだけど。どんなのがいいの?マウンテンバイクっていうのでもいいんだけど、通勤で乗りたいから、あまりごつい感じはやだなぁ・・・でも、基本お任せでよろしくぅ。』
彼女は語尾によく『よろしくぅ』って付ける。なぜかは知らない。理由を聞いたことも無い。
初めて会ったのは僕が23の頃だから、もう10年が経つ。一昔だ。
お任せほど難しいものはないのである。センスというか、能力を試されているようなものだからだ。でも頭の中で既に“O-TAKE”に決めていた。これしかないと思っていた。
パーツはほとんど中古品。人から貰ったのとか自分が持っていたものとか。
僕にしては珍しく、相談を受けて1ヶ月以内で出来上がった。ゆっこ以外のある人にせかされたからだ。怖い怖い。
僕の手持ちでこんな貴重なペダルも在った。何のヘンテツも無いこのペダルは・・・なんと、カンパニョーロ である。当然ゆっこには『はぁ・・・??』である。
当然スタンドも付けた。ダブルレッグスタンド。こいつはほんとに優れものですよねぇ。
このスタンドに関しては持ち主も『すごーいぃ!!』って言ってくれた。お世辞で。
最初は『変った自転車だなぁ。』くらいに思っていたゆっこだが、半年、一年と乗っていくうちに『これ、有名なやつなんだね!』っと解ってきた様子。
パンク修理なんかで自転車屋さんに寄ったりすると、『どこで買ったんですか?珍しいですねぇ・・・』なんて事をよく聴かれるらしい。
『これはO-TAKEってブランドで、日本製の、台数も凄く少ない貴重な自転車ですよ!』といった具合に説明してくれるのだそうだ。造った本人が一生懸命説明するより、第三者の人がぽろっと言葉にする方が、何倍も説得力があるのだ。
約5~6年の時間を経て、ますます気に入ってくれている様子。造って良かったと思う。
ゆっこは今年、ホノルル・センチュリーライドに出たいらしい。もちろん予定だから巧く行くかは休暇が取れるかどうか次第。そしてロードにもチャレンジしてみたいそうだ。
一気にどっぷり自転車にはまる人もいれば、数年かけてだんだん好きになる人もいる。それを観ているだけでも面白い。
さあ、明日には、ご無沙汰しているあいつからメールが来るかも知れない。
また、楽しくて格好いい自転車を考えなくっちゃ。